NIKKEI DESIGN 2025年4月号に掲載されました

REPORT メゾン・エ・オブジェ2025

伝統素材、職人の技を武器に欧州に適応したデザインを披露


冨岡商店

伝統工芸と欧州デザイナーが融合、樺細工をウオールパネルに


山桜の樹皮を使った、日本ならではの樺(かば)細工。ひと昔なら文箱、現在なら茶筒で知られる昔ながらの技術を使い、欧州向けにデザインを施して成功しているのが冨岡商店(秋田県仙北市)だ。


今回、欧州で本格的に発表したのが「センシィヴ・ウオール・カヴァーリング・パネル」。フランスに拠点を置くデザイナー、マウリシオ・クラベロ・コズロフスキー氏がデザインした。素材を様々な形にカットし、広い平面に並べるシンプルなアイデアだが、日本人にとっては驚く発想だ。山桜の樹皮の野性味と繊細さを生かしつつ壁を美しく飾るモダンなインテリアマテリアルは、2024年の「ウッドデザイン賞」で入賞した。


冨岡商店は12~19年に独フランクフルトの見本市「アンビエンテ」に樺細工のトレーや茶筒などで出展。20年からはほぼ定期的に「メゾン・エ・オブジェ」に出展しており、フランスや英国の世界的に有名な企業とも取引がある。


日本では百貨店や専門店で取り扱いがあるが、海外向けのプロダクトのデザインにはコズロフスキー氏をはじめ、欧米のマーケットや好みを良く知るデザイナーを起用している。例えばドイツの「iF DESIGN AWARD」で金賞を受賞している伊東祥次氏などがいる。


「海外に出るときは、その地を知る人によってローカライズすることが大切」と冨岡商店代表取締役の冨岡浩樹氏は言う。今回の出展でも、様々なインテリアデザイナー、エンドユーザーとコンタクトがあったそうだ。


現在、原料の山桜樹皮は、サステナブルな計画の下で管理されている山林の木を使用。切った木は無駄が出ないように、すべて何らかの材料として使う。このセンシティブ・ウォール・カヴァーリング・パネルでも、主要プロダクトの茶筒には使えない樹皮部分を使っている。

(永末アコ=ジャーナリスト)

2025年2月17日 秋田魁新報に掲載されました

2025年2月17日、秋田魁新報に掲載されました。

【樺細工、気軽に貼って】

樺細工を気軽に手に取ってもらおうと、仙北市角館町の樺細工製造販売・冨岡商店がヤマザクラの樹皮を丸く切り抜いた「樺ステッカー」を販売している。


小さくて茶筒などに使えなかった未利用材を使用した。封筒や贈り物のほか、話題作りに名刺に貼るのもお勧めという。


法政大のヒューマニティデザイン研究室が企画・デザインを手がけ、冨岡商店が商品化。同市の指定障がい福祉サービス事業所「愛仙」も工程の一部を担う。冨岡浩樹社長は「樺細工の魅力を幅広い世代に知ってほしい」と話した。


質感が異なる「粗」「削ぎ」「磨き」の3種類で、価格は13枚入りで880円。JR角館駅舎内のNewDays角館や角館樺細工伝承館などで販売している。(石塚陽子)

2024年7月20日秋田魁新報に掲載されました

2024年7月20日秋田魁新報に掲載されました。

 秋田県仙北市の樺(かば)細工製造販売・冨岡商店(冨岡浩樹社長)がヤマザクラの樹皮の未利用材を使った内装パネルを商品化した。海外デザイナーとの共同制作で樹皮のさまざまな質感を楽しめると好評だ。冨岡社長は「樺細工の新たな魅力を発信し、これまで行き場のなかった未利用材の有効活用につなげたい」と語る。

 内装パネルは正方形や六角形など9種類で、組み合わせて使える。それぞれ質感が異なる未利用材を使うことで、樹皮本来の自然な風合いや荒々しさを表現した。価格は1平方メートル当たり20万~30万円。

 同社によると、樺細工の材料調達は重労働という。2人で岩手県内の山林に車で片道3時間以上かけて向かい、ヤマザクラの木に登って樹皮を採取しているが、体力的に作業時間は2、3時間が限界という。樹皮が幹から浮き上がるのは梅雨明けから9月上旬までのため、作業時期も限られる。

 一方、樺細工の材料として好まれるのは皮目がはっきりしていて厚すぎず、磨いた時にあめ色のつやが出る樹皮。そのため、採取した樹皮でも使用しないものがあったり、茶筒などの商品製造過程で使わない部分が出たりしていた。冨岡社長は倉庫に未利用材が積み重なってきていたこともあり、以前から活用法を模索していたという。

 そんな中、昨年9月にフランス在住のデザイナー、マウリシオ・クラベロ・コズロフスキーさんから樺細工を内装材に取り入れてみないかとの提案を受けた。冨岡社長は2011年の東日本大震災で国内売り上げが落ち込んだのをきっかけに海外進出を本格化させており、コズロフスキーさんとは12年のフランスでの市場調査の際に知り合い、交流を続けていた。

 コズロフスキーさんは昨年8月に仙北市の武家屋敷などを巡り、新商品開発に向けてイメージを膨らませた。翌月、市場調査でフランスを訪れた冨岡社長に内装パネルの企画書を手渡した。「人工的な建造物に樺細工の大自然の表情がよく合い心を動かされた。未利用材の活用にもぴったりと感じた」と冨岡社長。その後、冨岡商店が企画書を基に内装パネルを完成させた。

 内装パネルは都内にオープンする欧州のブランド店の装飾に使われることが決まっている。冨岡社長は「海外の人たちの家屋などにも使ってもらい、樺細工の魅力を世界に広めたい」と話す。内装パネルに関する問い合わせは冨岡商店TEL0187・56・3239(石塚陽子)

商店建築  2024年7月号に掲載されました

樺細工のウォールパネル

茶筒やインテリア小物を中心に樺細工を行う冨岡商店は、使えずに行き場を失った山桜の樹皮(桜皮)をアップサイクルしたウォールパネル「センシティブ・ウォール・カヴァーリング・パネル」を発売した。自然素材で1つひとつ木の表情が異なるパネルは、KATANA や YUMI、TESSEN、KABUTO など9種類の形と、ポリッシュ、ロウの2種類の仕上げを用意。縦横自由に配置することで、さまざまな見せ方もできる。デザインはマウリシオ・クラベロ・コズロフスキー氏。

冨岡商店

URL◎https://tomioka-shoten.com/

電話◎0187-56-3239 

2024年6月13日読売新聞に掲載されました

樺細工 海外のデザイナーとコラボで海外展開

あきた経済インタビュー


 秋田を代表する伝統的工芸品・樺細工を製造販売する仙北市の「冨岡商店」は、樺細工の魅力を広く発信しようと、海外のデザイナーとの商品開発や国際見本市への出展などを積極的に行っている。社長の冨岡浩樹さんに海外展開の経緯や経営の展望を聞いた。(聞き手 浅水智紀)

●海外展開の契機は。

 2008年のリーマン・ショックと11年の東日本大震災だった。テーブルや照明器具などの高額商品がリーマン・ショックでまったく売れなくなり、大震災では三陸地方に納入した商品が被害に遭い、その後も売り上げが鈍った。そこで12年、ドイツの国際見本市にモダンなデザインを取り入れた約30種類の商品を中心に初出展したところ、フランスの有名ブランドとの商談がまとまった。樺細工のような美しい桜の皮を使った商品は海外にはなく、世界で唯一無二のものだ。桜は日本のイメージとも重なる。


●海外デザイナーとのコラボが多い理由は。

 海外展開に必要なキーワードは「ローカライズ」だと思う。フランスで売りたいなら、現地に住むクリエイターと知り合い、どんな商品なら普及するか考え続ける必要がある。最新作として先月発表した樺細工のインテリアパネルも、こうした試みの延長だ。南米出身でフランス在住のデザイナーと組んだ商品で、伝統工芸の素材をモダンにデザインした室内装飾として、ホテルや公共施設など様々な場面でも使ってもらえる商品に仕上がった。桜の皮はサスティナブルな素材であり、海外での受けもいい。


●今後の経営課題は。

 悩みは原材料となるヤマザクラの皮の調達。樺細工は江戸時代の「武士の内職」だったが、芸術品の域に昇華してしまった。芸術品として使える素材は、赤紫色で、つやが良い、強靭さも兼ね備えた部分に限られる。採取した皮のすべて使えるわけではないので、それが新商品の開発を難しくしていた。

 一方、桜の皮が取れるヤマザクラは広葉樹林の中に生えているので、山に分け入っての採取は重労働だ。なぜか、やせた土で日当たりもあまり良くないような厳しい環境の方が、樺細工に適した木に育つ。しかも、採取時期は幹から皮が浮き上がっている梅雨明けから9月上旬の短い期間に限られる。

 毎年、自ら山に分け入っているが、採取場所まで往復2時間かかる場合もある。採取してくれる人々の収入を確保するには、茶筒には適さない桜の皮でも生かせるような新たな商品開発が必要になってくる。樺細工のインテリアパネルは、こうした意味でも期待される商品だ。

 世界に一つ、秋田県独自の伝統工芸である樺細工を「使い続ける豊かさ」こそが、人々に潤いのある生活に貢献することだと信じている。それが我が社が掲げた経営理念。今後も、時空を超えた価値を樺細工に込めて発信していきたい。


とみおか・こうき

大仙市出身。角館高校、都内の大学を卒業し、1985年に冨岡商店入社、2005年に社長就任。角館工芸協同組合専務理事、仙北市商工会理事などを務めている。高校時代に始めた合気道は6段で、日本合気道協会で理事も務める。

BIC AKITA 06に掲載されました

[経営探訪]

テーブルウエアだけに限らない新たな商品の開発で樺細工の可能性を見出す

国指定伝統的工芸品・樺細工

需要の変化をいち早く感じ取る


 先代である父が樺細工問屋だった「菊地商店」を承継して創業したのが昭和45年のこと。冨岡浩樹さんは、平成17年から代表に就任し、同時期に本店を角館に移転してセレクトショップ『アート&クラフト香月』をオープンしたが、需要が変わったと感じた。

 樺細工は国指定伝統的工芸品。1781年から1789年の間に阿仁地方から角館に伝わったとされる貴重な技術で、山桜の樹皮を用いた細工物だ。防湿・防燥に優れ、なおかつ堅牢であるという特徴を持つ。そのため、古くから茶葉や薬を保管するものとして愛用されてきた。時代の変遷とともに、需要が落ち込んでいると感じていた冨岡さんは、代表就任前から新たな商品づくりに取り組んでいた。「青山にある伝統的工芸品産業振興協会を通じて、他の伝統工芸品の産地の方連携して商品を開発したり、東京都大田区の金属加工業の方とコラボしてランプシェードを作ったり。それまでの型にはまった製品だけでなく、樺細工の新たな可能性を模索していました。

東日本大震災による海外展開と海外クリエイターとの出会い


 平成23年の東日本大震災で売り上げが落ち込んだことがきっかけで、海外に目を向けた。樺細工に秋田杉や塩化ビニル樹脂などの異素材を組み合わせることで、現代的なエッセンスを取り入れたデザインブランド「art KABA」を立ち上げた。「これにより世界的ブランドからオファーを獲得でき、海外展開のきっかけとなりました。その後、フランス在住のデザイナーで、著名なブランドのアートディレクターを経験しているマウリシオ氏と出会い、懇意にしています。昨年夏、角館に来てくれたのですが、翌月私がパリを訪れた際に、新商品の企画書を見せてくれました」。マウリシオ氏が提案してくれたのは、住宅用のウォールパネルだった。ターゲットはフランスの富裕層だ。

 「フランスの住宅事情や文化などは、私にはまったく知識がありません。現地に住むクリエイターでなければ、考えつかない樺細工の活用法だと感じました」。

既成概念にとらわれず、新たな樺細工の活路を見出す


マウリシオ氏からの提案は、住宅の壁に取り付けるアクセントパネル。樺の素材の個性や仕上げによって生まれる質感の違いを活かしつつ、8種類のデザインを展開している。どれもマウリシオ氏が角館を訪れたときにインスピレーションされたもので、刀や弓、鉄扇、兜、鎧といった武家屋敷が立ち並ぶ角館にふさわしい日本の伝統的なモチーフが特徴だ。

 「国内の展示会で取引先から『樺細工、いい方向に脱皮できましたね』と言われ、うれしかったですね。樺細工の魅力はひとつひとつが違う表情であること。今回の商品はその特徴をうまく捉えたものになっています。地域を知るクリエイターとコラボする重要性も再認識しました」。

 この新商品は、5月に記者会見で正式リリースを迎えたばかり。冨岡商店の新たなフェーズが今、始まる。

プレスリリース

新作発表会「 センシティブ・ウォール・カヴァーリング・パネル 」

~ヨーロッパのデザイナーと日本の伝統工芸の融合~

フランス在住、クリエイティブ・ディレクター、マウリシオ・クラベロ・コズロフスキー氏の独創性溢れるデザインと、日本の山桜の樹皮の野性味溢れる繊細で静謐(せいひつ)な表情が融合。秋田から世界で初めてとなる樺細工を使用したウォールパネルを創り上げました。

山桜の樹皮のユニークな表情と相まって、数々のオブジェを提供するこの【センシティブ・ウォール・カヴァーリング・パネルシリーズ】は唯一無二の空間を表現し、そこに住む喜びをご提供します。

日  程:2024年5月24日(金)17:00~18:30(開場 16:30~)  

会  場:アート&クラフト 香月(冨岡商店本店) *駐車場有(要連絡)  

形  式:ハイブリッド配信(現地 /オンライン)           

参加申込:事前登録制*(*現地参加については人数制限あり)

デザイナー:マウリシオ・クラベロ・コズロフスキー氏

(bespoke creative services 代表)

フランスを拠点とし、ハイブランドのアートディレクターを務め、インテリア関連展示会の開催、アートギャラリーでのプロジェクトなどを行い、国際的に活躍をしている。産業デザインの専門知識と伝統工芸マイスターの技術を融合させることを得意とし、年間250以上のプロジェクトを手掛ける。

@mclaverok

@tomioka_kabazaiku

@art_craft_kazuki

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